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山之内靖氏の「応答」についてひとこと

雀部幸隆

2004年2月12日

 

 

 橋本努氏の「羽入折原論争」に係るホームページで、山之内靖氏の「応答」を拝見しました。氏らしいソフィスティケイトされた文章ですが、ひとこと簡単に申し上げたいと思います。

 氏のご趣旨は要するに、<自分はもともとウェーバー信者ではないし、むしろ逆に聖マックスの脱魔術化を積極的に推進してきたつもりである。だから自分にとって羽入書は痛くも痒くもない。羽入−折原論争などは所詮ウェーバー業界内のコップの中の嵐に過ぎない。現在精神世界の大状況はそんなことよりはるかに深刻な問題を抱えており、それと取り組むのが先決で、自分にはそんなコップの中の争いに関わっている暇はない>、というものです。

 しかし、羽入書の流布と一部論壇におけるその妙な権威づけとは、まさにそれ自体わが国現在の精神状況のおかしさを示す一齣であり——それとも、おかしくない、と仰るのですか?——、山之内氏が精神世界の大状況と関わるのがわが使命だなどと言われるのならば、そもそもその大状況を織り成す一齣に対しても、まともに対応なさる必要がありはしないでしょうか。まして山之内氏はずいぶんとウェーバーを話の種にしてこられたのですから、そのネタに関して、<そいつは実はとんでもない詐欺師で犯罪者だったんだよ>とまでこきおろされて、<いやあ、今はほかにやることが一杯ありますので、わたしはこの辺で失礼します>と仰ったのでは、『マックス・ヴェーバー入門』の読者、氏の周辺は知らず全国の広汎な読者、からは、<それは聞こえませぬ>、と言われはしないでしょうか。